7月はじめ、宮城県「川崎町の資源をいかす会」主催の「田んぼで遊ぼうかい」の草取りに行ってきました。
1 川崎町と資源をいかす会
川崎町は宮城県南部・蔵王山麓に位置する人口約一万人の町で、仙台市と山形市に挟まれた丘陵地と盆地からなり、町の東側には仙台都市圏住民の水がめとなっている釜房湖(釜房ダム)があります。「川崎町の資源をいかす会」(以下「いかす会」と略します)は、「100年後には、川崎町が『食とエネルギーを100%自給』できるように」をキャッチフレーズに2001年に発足し、町内にある山・森・田・畑・川・湖などの豊かな自然を守り活かすさまざまな
活動を行っています。その1つ「川崎産の木で健康的な家づくりグループ」は、地場の間伐材を活用し、シックハウス症候群と縁のない健康的な家や遊具作りに挑戦しています。これまでに間伐丸太材を利用したブランコ、木造平屋建ての公民館分館、健康的で木のぬくもりを充分にいかした木造住宅などが完成しています。「雁戸白炭の会」では、廃校の校庭の片隅で、石窯を復元し備長炭より上質の白炭を焼いて、70才代の名人たちが持つ技術と知恵を頼りに、後世へ伝える活動を行っています。「原木きのこの里づくりグループ」では旬のきのこが多くの人々の食卓に上ることがあたりまえになることを目標に、15年〜30年の広葉樹を利用して原木きのこを栽培し、安全で安心な高級自然食品として販売しています。これら広葉樹林を生かした活動は、町内の林業の発展、生活文化の伝承に努めるだけでなく、山林の保全や、人々の憩いの場としても一役買っています。その他にも、貸し森林制度、ミニ水力発電建設、貸
し農園、バイオマスエネルギーの活用など、会が発足して以来着実に成果をあげ、現在では、国土交通省が行っている「釜房ダム水源地域ビジョン」と連携し活動の中心を担っています。今回私たちが参加したの田んぼの草取りも、「いかす会」の活動の1つ「田んぼで遊ぼうかい」が行っているイベントの1つです。「田んぼで遊ぼうかい」は、除草剤、農薬、化学肥料を一切使用しない有機農法の田んぼで、泥んこになりながら田植え、草取り、稲刈りなどを楽しみながら体験する活動を行っています。
(釜房ダム上空写真)
このような有機農法は、安全でおいしいお米が獲れるだけでなく、釜房湖に流れこむ水も汚さず水質の改善につなげます。モチロン、有機の田んぼですから微生物を餌にするイトミミズやユスリカなども豊富で、さらにそれらを餌にするカエル、トンボ、タニシ、ドジョウなどの小動物もたくさん生息しています。これらの小動物が出す排泄物は栄養源になり、化学肥料が無くても稲の収穫を落とさず成育を促進する水田本来の生き物の活動を最大限に活用したサスティナブル(持続可能)な農法なのです。
(田んぼに生息するアマガエル)
2 「従来の田んぼ」と 「有機農法(不耕起)の田んぼ」
有機の田んぼと、そうではない従来の田んぼの違いは一目瞭然です。左の写真は除草剤、農薬、化学肥料を使用した従来の田んぼです。田植えから約二ヶ月でこのように成長します。また収穫や田植えには田植え機やバインダーなどの機械を使用するので、稲との間隔は約15cmと狭く、1000u当たり約7~8俵のお米が取れるそうです。しかし、残念ながら田んぼにカエルやタニシが生息している様子は見られません。
(従来の農法で育てた田んぼ)
一方、資源をいかす会の田んぼは左の写真のように成長は遅く、違いは一目瞭然。田植え機やバインダーなどの機械も使用しない手作業なので稲の間隔も約30cmと広めで、1000uあたり約3~4俵しかお米が収穫できないそうです。しかし除草剤や農薬を使わないので場所によっては足の踏み場もないほど多くの小動物が見られます。
(資源をいかす会の田んぼ)
「資源をいかす会」代表の菊地重雄さんは、
■日本の稲作は、かつて(1000uあたり)3~4俵の収穫をしてきた。それに比べ7~8俵も収穫できる
現代の田んぼは異常である。
■小動物が生きている田んぼは安全で安心を見分けるバロメーターになる。つまり、「生かす会」の
田んぼのお米は安全だと小動物たちが証明してくれている。
■稲と稲との感覚が広いといもち病など、葉の病気の蔓延を抑制することができる。
■田植え、収穫、雑草取りなどはほとんど手作業だが、会のメンバーが大勢で手伝うことで作業が
はかどり、格好の交流の場にもなる。家族連れの子供たちも手伝うことで、自然と触れ合い遊ぶ
良い機会にもなる。
など、有機田んぼのメリットを教えていただきました。
「いかす会」の田んぼは不耕起農法といって水田や畑を耕さないままで作物を栽培する農法で、さまざまな作物、さまざまな作型で行われていて、耕起しないことで、@省力化が可能 A雑草の繁殖抑制 B土の移動による病気の蔓延が抑制できるなどの利点があります。
「従来の田んぼ」と「有機田んぼ」の違いと利点を下の表にまとめてみました。
「従来の田んぼ」と「除草剤、農薬、化学肥料を使わない田んぼ」の違いと利点
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従来の田んぼ(除草剤、農薬、化学肥料を使用)
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資源をいかす会の田んぼ
(有機栽培)
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| 収穫量(1000uあたり) |
7〜8俵 |
3〜4俵 |
| 1俵あたり米の値段 |
約15,000円 |
約30,000円 |
| 米価(1000uあたり) |
105,000〜120,000円 |
90,000〜120,000円 |
| 稲と稲の感覚 |
約15cm |
約30cm
(葉の病気の蔓延を防ぐことができる)
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| 生息する小動物の数 |
少ない |
多い
(微生物や小動物の排泄物が稲の栄養となる)
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| 作業の仕方 |
機械 |
手作業
(大勢で作業することによって人びとの交流の場、子供たちが自然と触れ合える場となりうる)
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| その他 |
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不耕起栽培 |
3 真の豊かさとは 〜「買う豊かさ」から「作る豊かさ」へ〜
今回訪れた「資源をいかす会」では、“買う豊かさ”から“作る豊かさ”への復活を、100年後という未来を見据えてゆっくりと確実に実行しています。人と自然を大切にし、人間も自然の一部ということを自覚し、なによりも自ら楽しんで活動を続ける「川崎町の資源をいかす会」の思いが、今後の日本の持続可能な豊かさのために最も必要で確かな資本なのかもしれません。
今回は「川崎町の資源をいかす会」の活動を拝見するには非常に短い期間でした。機会があれば是非また会のイベントに参加して、川崎町のすばらしい自然を満喫し、様々な資源をいかす活動を体験したいです。今回泊めていただいただけでなく、大変興味深く貴重なお話や大変おいしい食事まで用意していただいた菊地夫妻をはじめ、「川崎町の資源をいかす会」の皆様に深くお礼を申し上げます
(有銘良太)